潰瘍生大腸炎(血便・腹痛・下痢)

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以下の項目に該当する方は要注意です

・慢性的に腹痛を感じる

・血便が出た

・粘血便(赤い粘液が付着した便)が出た

・下痢が頻回に出る(トイレへ行く回数が増えた)

・下痢、血便、粘血便に加えて発熱もみられる

 

当院では消化器専門外来を実施していますので、上記のような症状が見られた際はお早めにご相談ください。当院への診察予約はネットからでも承っておりますので、お気軽にご活用くださいませ。

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症性変化、すなわち、びらんや潰瘍ができる原因不明の病気です。潰瘍性大腸炎は、寛解(症状が落ち着いている状態)と、再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。再燃を起こす患者さんのなかには、最終的に手術(大腸摘出手術)が必要になる方もいます。治療により一度寛解の状態になっても再燃を予防するために、適切な治療と定期的な検査を継続的に受けることが非常に重要です。

潰瘍性大腸炎の患者さんの数

厚生労働省の調査によると2016年度の潰瘍性大腸炎の患者さんは167,872人と報告されています。近年患者さんの数は急激に増加しています。

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発症しやすい年齢

発症年齢は男性は20〜24歳、女性が25〜29歳で最も多くなっていますが、若年者から高齢者までどの年代にも発症します。患者数の男女比はほぼ同じです。

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潰瘍性大腸炎の発症原因

潰瘍性大腸炎が発症する原因は正確にはまだわかっていません。以前は細菌やウイルスなどの感染が原因だとする説、牛乳などの食物によるアレルギーによる疾患だという説、神経質な性格のためになるという説などがありました。

 しかし現在では、(1)遺伝的要素、(2)食べ物や化学物質などの環境因子、(3)腸内細菌、(4)免疫異常などの要因が重なり合って発症する病気と考えられています。はっきりとした原因がわからないために完全に治癒させる治療方法がないので、できるだけ症状を抑える治療を受けながら、この病気と長く付き合っていく必要があります。

よくみられる症状

潰瘍性大腸炎の症状で最も多くみられるのが便の異常です。発症早期には、血便以外の症状がほとんど無く、痔による出血と誤りやすいため注意が必要となります。炎症が大腸の広い範囲に広がると、血便以外に下痢・軟便や腹痛といった症状を伴うことがあり、下痢がひどい場合には、1日に20回以上もトイレにかけ込むこともあるほどです。さらに症状が悪化すると、体重減少や発熱などの全身の症状が起こることもあります。

経過

潰瘍性大腸炎は、寛解(症状が落ち着いている状態)と、再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。長い経過のなかで徐々に病気が進行し合併症があらわれる場合もあります。また、内科的な治療で症状が改善しない場合には、手術が必要となるケースがあります。潰瘍性大腸炎は適切な治療を継続的に受けることで再燃をコントロールし、安定した日常生活を送ることが重要だと考えられています。現在、さまざまな治療法の進歩により、手術を必要とする患者さんが減少すると期待されています。

潰瘍性大腸炎の診断方法

まず症状とその経過、病歴などについて確認する問診から始まります。それとともに、感染性腸炎など、症状が似ている他の腸疾患と区別するために細菌や他の感染症の検査を行います。その後、大腸の状態をより詳しく知るために内視鏡による大腸検査が行われ、さらに全身症状を確認するために血液検査などを行います。これらの検査結果から総合的に診断が行われます。

 

・便の培養検査

便を培養することにより、潰瘍性大腸炎に症状が似ている細菌性腸炎などの感染症を調べます。

・血液検査

炎症が活発になっていないかどうかを調べるために行います。

 

検査項目

CRP(-0.2mg/dL)

炎症が強くなると上昇するため、炎症の有無を知る最も一般的な検査です。

赤沈(男性:2-10mm/h、女性:3-15mm/h)

炎症が強くなると上昇するため、炎症の有無を知る昔からある検査です。

白血球数(4,000-9,000/μL)

正常値を上回る場合は炎症反応が強いことが考えられます。下回る場合は薬剤(免疫抑制剤など)の副作用を考えます。

アルブミン(4.0-5.0g/dL)

栄養状態の判定に役立ちます。

ヘモグロビン(男性:14-18g/dL、女性:11-15g/dL)

赤血球中のタンパク質です。正常値を下回る場合は貧血と診断されます。

・大腸造影検査

病変の範囲や大腸の状態を把握するための検査です。

肛門からカテーテルを挿入し、造影剤と空気を注入した後、X線写真を撮ります。

・大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)

病変の状態を的確に把握し、症状がよく似た他の大腸疾患と鑑別し確定診断を行うための検査です。

内視鏡を肛門から挿入し、病変を直接観察するとともに生検(顕微鏡で調べるため病変とみられる部分の組織を一部切りとること)を行ったりします。

大腸カメラ検査はお腹が張って苦しい・辛いと思われる方も多いかもしれませんが、当院では検査時の苦痛を減らすためにさまざまな取り組みを行っています。より詳しく知りたい方は当院大腸カメラ検査ページをご覧ください。

当院の大腸カメラについて

潰瘍性大腸炎の治療

潰瘍性大腸炎の多くは寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。未だ、完治させる治療法が見つかっていないため、適切な治療を継続することで再燃をコントロールし、寛解を維持することが重要です。長期にわたり寛解の状態を維持することができれば、外出時の度重なる便意など、日常生活に不安を抱えることなく安定した毎日を送ることが可能になります。

 患者さんの病変の範囲や、重症度、QOL(生活の質)を考慮して治療方法を決定します。潰瘍大腸炎の治療の基本は、薬物療法であり、それでも症状をコントロールできない場合には、外科治療(手術)の対象となることがあります。

 

・薬物療法

「5-ASA製剤(5アミノサリチル酸)」

 

特徴

潰瘍性大腸炎の基準薬として、主に軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に使用されます。再燃時の炎症を抑え、下痢、腹痛などの症状を改善することに加え、再燃を予防する効果もあります。

主な治療薬

・ペンタサ錠(メサラジン)

・ペンタサ顆粒(メサラジン)

・アサコール錠(メサラジン)

・リアルダ錠(メサラジン)

・サラゾピリン錠(サラゾスルファピリジン)

作用

体内に吸収されて効果を示すものではなく、有効成分のメサラジンが病変部の腸管に直接作用し炎症を抑える薬剤です。腸内細菌により分解され有効成分が放出される薬剤(サラゾピリン)や、腸内で徐々に溶ける薬剤(ペンタサ)、体内のPH(酸性・アルカリ性の度合い)の変化により溶解される薬剤(アサコール、リアルダ)など、腸内で効果を示すように工夫された薬剤です。

副作用

 メサラジンは副作用は少ないとされていますが、アレルギー症状、消化器症状、頭痛などが報告されています。

 サラゾスルファピリジンはメサラジンと比較して副作用が多いといわれています(そのため第一選択の薬剤にはなりません)。アレルギー症状、皮疹、消化器症状、頭痛などあります。このほか肝障害や稀に赤血球が壊れてヘモグロビンが溶け出すことによって起こる溶血性貧血などの血球異常もみられますので、定期的な血液検査を受ける必要があります。また、男性の場合には精子数の減少や運動機能の低下を引き起こし、男性不妊の原因となることが知られていますので、将来子供を希望される場合はご相談ください。

「副腎皮質ステロイド」

特徴

中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者さんに使用されます。重症の場合には、入院し点滴による治療を行うこともあります。ただし漫然と使用することはさけ、症状の改善に伴い徐々に減量することが重要です。

主な治療薬

・プレドニン(プレドニゾロン)

・プレドネマ注腸(プレドニゾロン)

・ステロネマ注腸(ベタメタゾン)

・リンデロン坐薬(ベタメタゾン)

・レクタブル注腸フォーム(ブデゾニド)

作用

強力な炎症抑制作用を示す薬剤です。

副作用

主な副作用は、顔がむくんだ状態になるムーンフェイスと呼ばれる症状や、ニキビ、体重の増加、不眠などがあります。ほかにも、長期間使用すると骨粗鬆症や糖尿病、感染症にかかりやすくなるなどの重篤な副作用がみられることがあります。

患者様へ

軽症〜中等症の潰瘍性大腸炎に対して十分量の5-ASA製剤を投与しても改善がないとき、あるいは発熱などの全身症状があり迅速な改善が望まれる場合にはステロイド剤が用いられます。ステロイド剤には強力に炎症を抑える作用があり、潰瘍性大腸炎の寛解導入に有効ですが、再燃の予防効果はありません。ステロイド剤は通常、急性期に病気の勢いを抑えるために用いられ、病気が鎮静化した後は徐々に減量し最終的には投与を中止します。

「免疫調節剤」

 

特徴

潰瘍性大腸炎では過剰な免疫反応が認められることから、免疫を抑える免疫調節剤も治療に使われます。ステロイドの減量や離脱に伴い症状が再燃する患者さん(ステロイド依存例)に使用します。

主な治療薬

・イムラン錠(アザチオプリン) 

・アザニン錠(アザチオプリン)

・ロイケロン散(6-メルカプトプリン;6-MP)※潰瘍性大腸炎に対する保険適応はありません

作用

体内で起きている過剰な免疫反応を調節する薬剤です。

副作用

血球減少を生じる可能性が高いので、この薬を服用する場合は、投与開始直後は頻回に、その後は定期的に血液検査を受ける必要があります。その他、脱毛、無顆粒球症、肝機能障害、腎機能障害発疹、血管炎、再生不良性貧血、間質性肺炎など稀な副作用もあります。投与開始前に、血液検査でNUDT15を測定することによって、重篤な副作用を避けることができるようになってきました。

 

「生物学的製剤」

 

特徴

生物学的製剤は最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品です。他の治療では十分な効果が得られない患者さんに対し改善効果が期待できます。薬剤によって異なりますが、2週から8週に1回程度点滴や皮下注射を継続します。長期間投与することによる効果減弱や副作用などがありますので、治療薬の選択と開始には専門家による慎重な判断が必要です。薬剤費がかなり高額になりますので医療費助成制度を利用することになります。

主な治療薬

・レミケード(インフリキシマブ;抗TNF-α抗体製剤)

・ヒュミラ(アダリムマブ;抗TNF-α抗体製剤)

・シンポニー(ゴリムマブ;抗TNF-α抗体製剤)

・ステラーラ(ウステキヌマブ;IL-12/23p40抗体製剤)

・エンタイビオ(ベドリズマブ;α4β7インテグリン阻害剤)

・ゼルヤンツ(トファシチ二ブ;JAK阻害薬)

作用

抗TNFα抗体製剤;潰瘍性大腸炎の炎症に直接関与しているTNFαという物質の働きを抑える薬剤です。この製剤はTNFαを作り出す細胞にも作用し、過剰な産生をストップさせる働きもあります。

IL-12/23p40抗体製剤;免疫反応などに深く関わるインターロイキン(IL-12及びIL-23)の働きを阻害し、潰瘍性大腸炎の症状を改善します。

α4β7インテグリン阻害剤;リンパ球が腸管へ入り込むのを阻害し、潰瘍性大腸炎の炎症を抑制する薬剤です。

JAK阻害薬;細胞内の伝達経路のひとつ(JAK経路)を阻害することで、潰瘍性大腸炎の炎症を引き起こす物質の産生を抑制します。

 

副作用

B型肝炎や結核、帯状疱疹などの感染症の再燃に注意する必要があります。その他薬剤により関節痛や血栓症、腎障害などもあります。


 

「血球成分吸着療法」

 

特徴

ステロイド治療で効果が得られない患者さんに使用されます。通常は一連の治療として最大10回までです。

主な療法

・顆粒球吸着除去療法(GCAP)

・白血球吸着除去療法(LCAP)

作用

血液を腕の静脈から一旦体外に取り出して、特殊な筒に血液を通過させることにより、特定の血球成分(主に炎症に関与する血球成分)を除去し、その後再度血液を体内に戻すことで効果を発揮します。

GCAPは主に、顆粒球、単球を除去し、LCAPは顆粒球、探究に加えリンパ球、血小板を除去します。

副作用

吐き気、血圧低下、発熱などですが、ステロイドによる治療に比べれば、副作用が少なく、比較的安全な治療法です。ただし、1週間に1度1回あたり1時間程度専門の病院で行う必要があります。

「カルシニューリン阻害剤」

 

特徴

ステロイド治療でも効果が得られない重症患者さん(ステロイド抵抗性)に使用されます。即効性を期待する場合にはシクロスポリンの持続注射を7−14日間行い、有効であれば経口投与に変更します。

主な治療薬

プログラフ(タクロリムス)

作用

体内で起きている過剰な免疫反応を強力に抑制する薬剤です。

副作用

腎障害、しびれ、手の震えなどがあります。

 

ステロイド薬、抗TNFα受容体拮抗薬、免疫調整薬などのお薬を症状に応じて処方していきます。どの治療薬も潰瘍性大腸炎の炎症を抑える働きがあります。

 

・外科手術

 

潰瘍性大腸炎の多くは薬物療法でコントロールできますが、下記のようなケースでは手術の対象となることがあります。

(1)~(5)は手術が必要とされる絶対的手術適応に分類されますが、(6)は患者さんの長期QOLなどを考慮して決定する相対的手術適応に分類されます。

(1)大量出血がみられる場合

(2)中毒性巨大結腸症

(3)穿孔

(4)癌化またはその疑い

(5)内科的治療に反応しない重症例

(6)副作用のためステロイドなどの薬剤を使用できない場合

 

 手術は大腸の全摘が基本となります。以前は人工肛門を設置する手術が行われていましたが、現在では肛門を温存する手術が主流です。この手術は大腸を取り除いた後、小腸で便を貯める袋を作って肛門につなぐ方法です。この手術方法で患者さんのQOLは以前より向上しています。また、高齢者や合併症などによっては人工肛門を併用する手術が選ばれることがあります。

 手術が必要と判断した場合は潰瘍性大腸炎を専門的に治療している中核病院を紹介させていただきます。

お問い合わせ

潰瘍性大腸炎は国が指定している難病ですが、近年患者数は著明に増加しています(特に若い世代層でも増えています)。下痢や血便などが長期間続く時は潰瘍性大腸炎の可能性があります。痔からの出血だと思って放置される方も多いですが必ず一度専門家に相談しましょう。また、症状が落ち着いているからといって自己判断で治療を中断してしまう方もおられますが、治療の中断による再燃、重症化も問題となっています。必ず専門家による治療の継続が必要ですのでお早めに相談ください。